【良い評判/悪い評判?】一億人の英文法【やり込んだ私が徹底レビュー!】

「英文法を本格的に学習したい」と考えた時、検索でまず引っかかるのが「一億人の英文法」という参考書です。

今日本で最も有名な文法書と言ってもいいかもしれません。

ただ、いざネットで評判を調べると、皆さん判断に迷うのではないでしょうか。

それは、「良い評判と悪い評判が混在する」からです。

問題は、レビューサイトが無数存在する一方で、

実際に「一億人の英文法」をやり込んだ個人の視点から書かれたレビューはほとんどありません

そこで本記事では、誰よりも本書を使い込んだ私”さみだれ”の視点からレビューしてみたいと思います

当時、日本語訳を見れば英文が出てくるくらいやり込みました。誰よりもやり込んだ自信があります。

だからこそわかる本書の「良い点」/「悪い点」を著者に忖度(そんたく)せずに、書き留めていきたいと思います
本記事が参考になる方
・「一億人の英文法」での学習を検討されている方
・使い始めたけど違和感を感じている方
・途中で挫折してしまった方

是非このレビューを参考に、今後の学習方針を決めてみてくださいね。

それでは早速見ていきましょう。

さみだれ
実体験に基づいた「一億人の英文法」の本格レビューです。

「一億人の英文法」とは、そもそもどんな文法書?

さて、詳細なレビューに入る前に「一億人の英文法とは、そもそもどんな文法書か?」について軽く触れておきたいと思います。

一億人の英文法の特徴
・全682ページの本格的な文法書
・網羅する範囲としては、高校文法+アルファ
・従来の文法用語を極力排除し、新しい視点での文法解説が特徴
・イラストを豊富に用いた「イメージ」の説明を重視
・「ネイティブの意識」に焦点を当てた解説(ネイティブと共著)

ざっとこんなところでしょうか。

ある程度網羅的に文法を学びたい、と思った時に、「一億人の英文法」か「Evergreen」のどちらかが有力候補になります。

「Evergreen」は高校英文法の王道でこちらも良い参考書ですが、やや教科書的な印象を受けるかもしれません。

本記事では「一億人の英文法」に焦点を当てて説明をしていきたいと思います。

「一億人の英文法」のレビュー【良い点】

それでは早速レビューに入りたいと思います。まずは良い点についてです。

イメージで捉えられる

まずは何と言ってもこれです。本書の推しでもある「イメージ」を用いた解説は、秀逸です。

従来の参考書にはなかった斬新な切り口での説明が分かりやすく、今まで”もやもや”していた文法事項がすっきりします

例えば、多くの日本人が苦しむ「現在完了のhave」の用法についてです。

著者は「現在完了形の焦点は現在にあります」と言い切ります。

一見全く異なるように見える「現在完了のhave」の各用法(経験とか完了)は根っこでは繋がっていると言います。

更に大西氏は、各用法の厳密な区別は無意味と説き、あくまでも「現在に迫ってくる」というイメージで現在完了を捉えるべきと説明しています

「完了:~しました」とか、「経験:~したことがあります」という日本語に引っ張られ、「現在完了=過去」のイメージを持っていた当時の私には目から鱗の説明でした。

上記は1例ですが、堅苦しい文法用語を使わずにあくまでもイメージで説明しようとする点が、本書の一番良いところだと思います。

「イメージ」を付与することで、文法事項が生きた知識に様変わりします。
さみだれ
文法はテストのための学習ではありません!

実用的な例文

「実用に役立つ例文」と本書が強調するように、

いかにも日常会話で使えそうな生きた例文がふんだんに使われています

ネイティブと共著ということもあり、オリジナルの例文を作る事が容易だったのでしょう。

また本書が大西氏の集大成ということもあり、著者の他の本からの引用もあるようです。

以下少し例を載せますね。

You’re not leaving me, right? – Of course not!
(僕と別れたりはしないよね、そうだろ? – もちろんよ!)

I didn’t go to work today. – Why not?
(僕今日仕事行かなかったんだ – なんで?)

「not」に関連する章での例文ですが、普段の会話でそのまま使えそうですよね

「Of course not」なんていかにネイティブらしい表現です。

文法書によっては、書物やニュースに出て来るような固い例文しか載っていないものもあります。

それ自体が悪い訳ではありませんが、

会話を重視するのであれば、本書の例文の方がはるかに役に立ちます

文法書の英文は、音読して自分の中に馴染ませて”なんぼ”です。

例文ごと用法を覚えるくらい繰り返し音読を行いましょう。

「一億人の英文法」の例文はそれに値するものばかりです。

音読は英語を脳に吸収させる非常に優れた学習法です。是非こちらの記事「【科学的に証明された】英語音読のやり方・効果・オススメの教材を紹介」も併せてご覧くださいね。
さみだれ
繰り返し使う文法書の例文はとても大事なのです

踏み込んだ文法解説

「一億人の英文法」では、通常の参考書では決して説明されない踏み込んだ内容にも触れています。

必須事項ではないけれども知っておくとより深い理解が得られる、と言った内容で、「ADVANCED」「ULTRA ADVANCED」というコラムで説明しています。

例えば、以下とある「ULTRA ADVANCED」のコラムからの引用です。

(1)I saw Harry punch the bully.
(ハリーがいじめっ子にパンチするのを見た)

(2)I say Harry punching the bully.
(ハリーがいじめっ子にパンチしているところを見た)

(1)に比べ(2)の方が、パンチをしたその瞬間を捉えた躍動感がある、と説明しています。

日本語訳にも、違いが表れていますね。

本格的な文法書でも、このようなニュアンスの違いを説明しているものはほとんどありません。

ここでもやはり”ネイティブとの共著”というのが生きていると感じました。

何回か通読する中で、このような踏み込んだ説明にも注意が向くようになったとき、本書の”1つ上”の説明の有難みを痛感しました。

さみだれ
後々からこの”1つ上”の学習が活きてきます。

「一億人の英文法」のレビュー【悪い点】

さて、次に悪い点について触れていきます。少し辛口かもしれません。

ターゲット層が不明確

「すべての日本人に贈る」とサブタイトルにある通り、「一億人の英文法」は中学生から英語が必要な社会人まで、幅広い層をターゲットにしています。

”広く売り込みたい”という気持ちはわかりますが、さすがにここに無理があるのです

例えば、私の場合は大学受験を経験している事もあり、本書を読み始めるまでにある程度の文法知識を持っていました。

なので「Be動詞とは」とか「他動詞とは」と言うような説明は冗長に聴こえます。

一方、本書で初めてBe動詞を学ぶ人にとっては本書のBe動詞の説明では不十分だと思います。

本書では明らかにその上のレベルに焦点を当てているからです

中学レベルは理解しているものの高校レベルは自信がない、という方がメインのターゲットになると思います。

なので、英語初心者の方が本書で文法を学習するのは非常に厳しいと思います

さみだれ
欲張らずにもう少しターゲットを絞って解説をしてほしかったな、と思います。

文法用語を排除した弊害

本書の特徴でもある「従来の文法用語を極力排除する」というのは、もろ刃の刃でもあります

確かに高校レベルになると文法用語も複雑になります。

文法的に解釈しようとするがあまりに理解が難しくなるケースもあると思います。

「代名詞を目的語にとる形容詞で叙述的に用いる」なんて言われていも、さっぱりわかりません。

そういう意味では、無駄に難解な文法用語は避ける、というコンセプト自体には私も大賛成です

一方、本書ではそれをセールスポイントにしようとするがあまり、独自の文法用語を”定義”している点は気になります

たとえば、本書には5文型(SVとか)は出てきません。

別にそれ自体は良いと思うのですが、それを「他動型」「自動型」「説明型」「授与型」と、新たな言葉で定義し直しています。

既に5文型を理解している人からすれば、無駄に新しい言葉や概念を覚えないといけないので、めんどくさいのです。

結局文型を定義するのであれば、5文型をベースに分かりやすく説明し直した方が良いのでは?と思ってしまいます。

ただし、これは既存の文法事項にある程度慣れ親しんでいる人の感想であって、従来の文法解説にうんざりしている方にとっては、分かりやすいのかもしれません。

大西氏の語り口

本書は大西氏とネイティブであるポール・マクベイ氏の共著です。

ポール・マクベイ氏はコンテンツの提供がメインであり、日本語の説明部分は大西氏がすべて担当していると想像されます。

つまり、これだけの大書にも関わらず、実質的には一人で書き上げており、その分良くも悪くも著者のカラーが出ています

これはもはや好みでしかないのですが、著者の話し口調(説明口調)が私の好みには合いませんでした

丁寧に説明していたかと思うと、急に上から「~してごらん」という風に諭してきたり、語り口調が統一されていません。

日本語訳も「~ではない」と書くところを「ぢゃない(=じゃない=ではない)」という風に、私からしたら無駄にラフな言葉を入れ込んだり、読んでいてストレスを感じました

「親しみやすい」という感想もあるようなので、この辺は人によって大きく意見が異なりそうです。

さみだれ
大西氏のNHKラジオも、聞いているとイライラする事があるので相性が良くないのだと思います。
(内容自体は素晴らしいのですが…)

「一億人の英文法」を使う条件と勉強法

良い点・悪い点の両側面を見て来ましたが、「結局オススメなの?」と聞かれたら、条件付きで「Yes!」と回答します

条件とは、以下3点です。

「一億人の英文法」を使う条件
・中学文法レベルはほぼ理解している
・著者の独特な口調に強い抵抗感がない
・このボリュームをやり切るだけのやる気がある

ポイントとして、著者の説明が理解できないところは無理に理解しなくてもOKです

私は一生懸命、大西氏の思考を学ぼうとしましたが、結局理解を断念した部分も多くあります。

例えば、本書で繰り返し説かれる「限定は前から、説明は後ろから」という説明が最後までしっくりこず、最終的には無視するに至りました。

既に自身の理解が確立している部分は、説明は読み飛ばし、例文だけ拾っていくという勉強法が効率的です

網羅的な要素が強い文法書ですが、重要度が高い部分(覚えないと英文構築に支障が出る部分)と低い部分(参考程度に知っておくと理解が深まる部分)が混在するので、例えば「ADVANCED」「ULTRA ADVANCED」のコラムは最初はスキップする等の工夫を行うのも一案です

多少癖があり、好みが分かれるのも事実です。それでもなお、

英文法をイメージで分かりやすく理解できるようにかみ砕いて説明している点において、本書は良書だと思います
さみだれ
説明が”軽い”ので、「まずは読んでみよう」という気になります。

「一億人の英文法」のやり込みとその効果

どのくらいやり込んだか?

私が本書を使い始めのは、社会人になって本格的に英語学習を始めた時でした。

TOEICで言えば600前後だったと思います。

冒頭でも少し触れましたが、本書は本当に良くやり込みました。

通読は3回以上、例文に関しては通読とは別に10回以上繰り返し、全ての例文で日本語→英語に「瞬間英作文」が出来るくらいやり込みました

スピーキングには「瞬間英作文」が効果的です。「瞬間英作文って何?」という方はこちらの記事「【瞬間英作文】英会話を改善する特効薬【スピーキングの本質】」をご参考くださいね。

例文だけでも相当な量があるので、一周復習するだけでも相当時間がかかっていたのを覚えています。

当時は、この文法書だけを一日2~3時間は学習していたと思います。

さみだれ
本書をここまでやり込んだ人はいないはず…

日本語→英語で、いちいち英文を隠すのが手間だったので、スキャンソフトでスマホに読み取った上で学習をしていました。

スクロールの位置を調整して英文を隠せるので、作業がしやすいですし、隙間時間にも学習できて良かったです。

画像スキャン→メモ帳貼り付けに膨大な時間を費やしたのはもったいなかったですが…。

さみだれ
最近は便利なアプリ版も出ているようですよー

「一億人の英文法」の効果

やり込みのおかげもあって、文法に対して絶対的な自信を持つことが出来るようになりました

実際、それ以降文法事項で困ることはほぼなくなりました

多くの方が英文を理解できない時、「自分の知らない文法事項が使われているのではないか?」と疑心暗鬼になりがちです。

実際には要因が別にある場合においても、その懸念を頭に抱えたまま英文を読み進めることになります。

自分の知らない文法事項=マニアックな文法事項=必ずしも知らなくても良い文法事項」と自信を持って判断できるようなったことも大きな成果です。

また英語多読を進める中で「一億人の英文法」で解説された高度な文法事項にも何度も遭遇し、「これ、知らないと絶対ニュアンス理解できないよな…」と思うことが度々ありました。

そして何よりも、

一億人の英文法」学習後、英語力が飛躍的に伸びました

確固たる文法力が成長を強力に後押ししてくれたのは間違いありません。

今改めて思うのは、英語力を伸ばすために「文法学習は必須!」という点です

本記事をお読みの皆さんは大丈夫だと思いますが、「英文法ってそもそも必要なの?!」と疑問に感じている方は、こちらの記事「【英語学習】英文法は必要?【ファイナルアンサ】」も参照くださいね。
さみだれ
本書の学習がなければ、とても今の英語力まで到達できなかったと思います…

参考までですが、以下の写真は私が持っている「一億人の英文法」です。

例文の音読/瞬間英作文はスマホメインで行っていたため、そこまでボロボロではありません。

「私」の1億人の英文法

レビューまとめ【文法書の良し悪し】

いかがだったでしょうか。

良い文法書/悪い文法書は、結局は読者が決めます。

いくら高尚な理屈で英文を分解し文法解説しても、それを理解し支持してくれる読者がいなければ、それは単なる学術書です。

本書のスタンスはあくまでも「読者に寄り添い、読者が理解できるように解説する」という点において一貫している様に思えます。

本書が一部で痛烈に批判されている背景に、「文法書はこうあるべき」と昔ながらのスタンスに拘っている人たちの意見が大きいように思えます。

万人に最適な参考書なんて存在しません。

長いお付き合いになる文法書です。

是非、書店で実際に手に取って中身を確認した上で購入を決めてくださいね。

以上お付き合い頂きありがとうございました。

最新情報をチェックしよう!