「単語帳では、何回やっても覚えられない」「語彙が少なくて英文の意味が取れないことが良くある」「覚えた単語もすぐ忘れてしまう」
このような悩みを抱えた方も多いのではないでしょうか。「単語の記憶が語学学習の半分を占める」と言っても過言ではないほど、負荷の高い作業です。英単語を覚える方法は大きく二つあります。
・単語帳を使って覚える
・音読やシャドーイング等で繰り返し同じ文に触れることで覚える
学習のステージによる使い分けや、そもそもの向き不向きはありますが、この2つが王道です。
さて、実はもう一つ英語の語彙を増やす方法があるのをご存じでしょうか。それが多読です。「知っている単語の復習になるかなぁ」くらいのイメージの方も多いかもしれませんが、実は多読(英語でたくさん読書すること)を進めて行く中で未知の単語をガンガン覚えていくことが可能です。よく言われる「知らない単語を推測して読みましょう」というのがポイントになるのですが、この辺は体験しないとなかなか分からない部分もあると思います。
そこで本記事では、多読を進めていく中で語彙を増やしていく方法を、具体的な例を示しつつ解説したいと思います。現在、単語暗記に苦慮している方は、ここに解決策があるかもしれません。是非、最後までご覧くださいね。
知らない単語を推測する
「CIRQUE DU FREAK」という子供向けの人気本から、英文を引用したいと思います。
無性のクモ好きである主人公は、ひょんなことから怪しいサーカスへ見学することになります。夜中の廃墟ビルの奥で開催されるサーカスには、様々な”奇異なヒトたち”が登場して、観客を驚かせます。その中の1つに、巨大な毒グモを笛で操るMr.Crepsleyなる団員が登場します。以下は、巨大なクモが本当に毒を持っているかを観客に示すために、実験台としてヤギをステージの上に連れてきて、ひもでテーブルにつなげた場面になります。
知らない単語を想定するために、いくつか日本語訳を伏せています。概ね、1文につき1単語の割合です。意味が推測できるか、トライしながら読んでみてくださいね(単語の意味を知っている方も、知らない前提で読んでみて下さいね)。
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Darren Shan著 “CIRQUE DU FREAK”より引用 (日本語訳は筆者が追加)
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さて、いかがでしょうか。正確な意味は取れないにせよ、「こういう意味かなぁ」くらいの推測はできたのでないでしょうか。一応答え合わせをしておきますと、
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Darren Shan著 “CIRQUE DU FREAK”より引用 (日本語訳は筆者が追加)
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【未知の単語】
crept(creep) : 忍び寄る
blew(blow) : 吹く
landed(land) : 止まる(蚊が腕に止まるの、”止まる”です)
bleating(bleat) : 鳴く
fangs(fang) : 牙
※()内は原形
となります。
(日本語訳は便宜上、原形の意味を示しています)
特に小説の場合は、ストーリーがありますから、「Aが起これば、次にBが起こるはず」という推測をしながら読み進めることになります。この「~はず」という推測が、単語の意味を補完することになるのです。
実際に読み進めている際は、仮に推測できた単語も、もっとボヤけたイメージになると思います。例えば、1つ目の単語「crept(creep)」も、「忍び寄る」というズバリの意味をこの文脈だけで推測することは難しく、何かしらの「動く動作」という理解に留まると思います。
しかし、異なる文脈で同じ単語に繰り返し出会うことで、「crept(creep)」→「動く」→「ゆっくり動く」→「忍び寄る」という”単語の雰囲気”を徐々に構築していくことが可能になります。”単語の雰囲気”と言ったのは、あくまでも単語のもつイメージであって、日本語訳ではないという意味です。多読中に日本語は介在しないため、「crept(creep)」のイメージを掴んでいたとしても、「日本語訳は?」と聞かれるとすぐに出なかったりします。これが多読の中で、単語を覚える感覚です。伝わりますでしょうか。
「同じ単語に繰り返し出会う」についてですが、今回「未知の単語」として取り上げた単語も、その後のストーリーで繰り返し出て来ることになります。あるテーマに沿ってストーリーが進む以上、そこに出て来る単語表現も自ずと限られて来るからです。従って、1つの小説で、単語のイメージを構築していくチャンスが何回もあるということになります(もちろん、場合によっては1回しか出て来ない単語もありますよ)。
単語を推測するために
さて、本題は以上なのですが、せっかくなので、多読の中で単語を推測するために大事なポイントを2つ示したいと思います。
ストーリーを追うために場合によっては単語を調べる
例えば今回のケースでも、「サーカスの舞台でヤギがテーブルにつながれており、団員が毒グモの脅威を観客に示そうとしている」というストーリーを追えていなければ、ほかの単語をいくら知っていたとしても、未知の単語の推測は難しくなります。多読の中で単語を覚えるためには、「ストーリーが追えている」というのが大前提となります。
そのため、「未知の単語を調べる」という作業も場合によっては必要になってきます。1つの単語の意味が分かるだけで、大分見通しが良くなる、なんてケースは良くありますから、あまり「多読3原則※」に拘らず、必要に応じて意味を調べて読み進めましょう。
※多読については【勉強がつらい時】多読という究極の学習法【注意すべき点もあります】でも解説していますので、合わせてご参考くださいね。
すぐ単語を調べない
上記と矛盾するようですが、説明しますね。先の例を引用します。
この文章で、「crept」という知らない単語が出てきても、一旦、少なくとも文の終わりまでは読み進めます。先ほど、体験頂いた通り、「前後」の文脈でもって初めてこの単語の推測が可能になりますので、「分からない」→「すぐ調べる」ということは避けましょう。ストーリーが追えている限りにおいては、文脈で意味を推測できない単語があっても一旦放置します。話が見えなくなってきたら初めて、「少し戻って単語を調べる」いう風に読み進めましょう。
最後に
いかがだったでしょうか。
今回、多読の中で未知の単語を覚える方法をご紹介しましたが、実は「単語帳を使って覚える方法」と”セット”で行うことで、より効率的に単語を覚えることができます。「単語帳でざっくり覚える」→「多読でその単語に遭遇し、ニュアンスと共に記憶する」の流れですが、詳しくは【超効率的】英単語の暗記方法【科学的方法】で説明していますので、合わせて参考にして頂ければと思います。
単語学習は、ネイティブでない我々にとっては、一生お付き合いしないといけない相手になります。焦らずじっくりと取り組んでいきましょう。
以上お付き合い頂きありがとうございました。