皆さんは「音読」に対して、どのようなイメージを持たれているでしょうか。
- 「中高時代に授業でやらてイヤなイメージがある」
- 「効果があると聞いてやったが、退屈だった」
- 「酸欠で苦しくなってやめた」
- 「そもそも効果が実感できなかった」
等々があるかもしれません。
実は今、英語学習法の中でも「音読」が改めて評価し直されているのをご存じでしょうか。
「音読」は昔から英語学習者の中でも、優れた学習方法として認知されてきました。
しかし「なぜ音読が英語学習に対して有効なのか」と言う点については、不明なところが多かったのです。
「音読って本当に効果があるの?」と疑問に思われている方は必読ですよ。
それくらいオススメの学習法です!
Contents
音読を解剖する
音読の効果を確認するために、音読のプロセスについて解剖していきましょう。
音読における多重プロセス
言語学者の門田教授によると、音読する時に以下のプロセスが同時に起こります※。
(2)文法・意味処理
(3)発音(発生)
(4)聴覚フィードバック
このままでは少し分かりづらいので、簡単に読み解くと、
(例)「apple」→「ˈæpl(アップル)」
(2)文法・意味処理 : 文章を理解するプロセスです。
(例)「The tea is so hot」→「あのお茶はとても熱い」
(3)発音(発生) : 実際に声を発するプロセスです。
(4)聴覚フィードバック : 発生した声を自分で聴くプロセスです。
つまり、音読とは
なのです。
音読時の脳の動き
実際、音読をしている際の脳は非常に活発です。
下の図の様に、黙読に比べて脳の広範囲が活性化していることが分かります。
「学校法人産業能率大学 総合研究所 東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなる!? ”」から引用
英語音読の効果
さて、脳がこれほど活発に働く「音読」。
有効な学習方法であることは間違えなさそうですが、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。
以下、順番にみていきましょう。
リーディング能力UP
前半に説明した「音読」の一連のプロセスによって、「プラクティス効果※」なるものが期待されます。
これは何かと言いますと、学習して覚えた単語や文法事項を脳に内在化させることによって、自動的な知識に変換することです。
要するに、「覚えた知識を瞬間的に引き出せるようにする」ということですね。そうすると、
音読は、「精読」「速読」の双方に対して有効なのです。
リスニング能力UP
意外に思われるかもしれませんが、こちらも実証されている内容です※。
皆さんはリスニングで、「あれ、今のどういう意味だっけ?」と考えている間に音声が次に行ってしまった、という経験はないでしょうか。
「プラクティス効果」によって、聞こえてきた”音”を瞬時にその”意味”に繋げる事が可能になるからです。
「ˈæpl(アップルという音) ⇨ apple ⇨ 🍎」
ではなく、
「ˈæpl(アップルという音) ⇨ 🍎」
という感じですね。
単語・表現力UP
記憶の「定着」という意味においても音読は有効です。
暗記において
- 見て覚える派
- 聞いて覚える派
と、それぞれ好みはあると思いますが、必ずしもどちらか一方を選ぶ必要はありません。
音読で両方を同時に行ってしまえば良いのです。
さらに、音読は発声も同時に行っている為、覚えた単語やフレーズを口からスムーズに発音できるようになります。
(この辺はアウトプットの範囲にもかぶりますがご容赦ください)
「何それ?」という方は、是非こちら「【超効率的】英単語の暗記方法【科学的方法】」の記事も参考にしてみてくださいね。
アウトプット能力UP
音読はアウトプットにおいてこそ、その真価が発揮されます。
例えば、英会話。
(1)まず、「プラクティス効果」によって知っている知識を瞬時に引き出せるようになります【頭のトレーニング】。
(2)更に、発声によって各単語やフレーズが口からスムーズに発音されるようになります【口のトレーニング】
この2つの効果によって、言いたい事が瞬時に頭に浮かび、かつそれらをスムーズに口から出せる様になるのです。
ライティングについても、(1)は同様のことが言えますよ。
英語音読による個人的な効果の実感
音読による効果は一言では言い表せません。私の場合は、
と言えるくらい、音読による効果を実感し続けてきました。
例えば、リーディングです。
当時私は、TOEICのリーディングセクションで、時間内にすべての問題を解き終えることができませんでした。
どんなに急いで解いても、10~15問程度解答できない問題があったのです。
そこで音読です。
公式問題集を買ってきて、かたっぱしから音読していきました。
同じ英文を20回以上も音読するときもありました。
その甲斐あって、リーディングセクションを10~15分ほど時間を余らせて終えることができるようになりました。
他の例で言いますと、スピーキングです。
仕事上、会議に出席して英語でしゃべる機会が多いのですが、当時はなかなかひどいものでした。
まず言葉がなかなか思いつかないですし、いざ喋るときも英語がスムーズに口から出てきません。
そこで音読です。
ビジネス系の参考書、仕事で使う自作の英単語集、会議頻出フレーズ集等をひたすら音読していきました。
その甲斐あって、徐々にですが英語で自分の言いたいことがすっと頭に浮かび、表現が口から突いて出る様になりました。
音読によって潜在意識に埋め込まれ英語表現が、会議での発言という(私にとっては)緊急事態時に呼び出された、と言ったイメージでしょうか。
広くは音読の一種ですが、もう少しスピーキングよりの学習になります。
こちら「【瞬間英作文】英会話を改善する特効薬【スピーキングの本質】」で紹介しているので合わせてご覧下さいね。
- 文法参考書 → 例文を音読!
- リスニング教材 → テキストを音読!
- 映画やドラマ → スクリプト(原稿)を見て、セリフを音読!
- 単語暗記 → 単語をひたすら音読!
こんな感じですね。
音読がなければ今の自分の英語力はありません。
ノー「音読」、ノー「英語学習」です!
英語音読の具体的なやり方
以上、音読の効果をみてきましたが、具体的にどのようなステップで学習を進めていくのが良いのでしょうか。
ここでは、一般的な参考書を使う場合を例にとって説明しますね。
音読の具体的なステップ
英文を選び、一回に音読する範囲を決めます。
教材の見開き2ページ程度が適当です。
可能な限り意味を取りながら、まずは通読してみます。
知らない単語や文法事項を調べます。
必要に応じて和訳も参照しましょう。
自信のない単語は、発音記号まで調べることを強くオススメします。
このステップをしっかりやらないと、以降の学習の効果が半減します。
テキストを見ながら、音声を聴きます。
聴き取りが難しい部分は、繰り返し聴いて音を覚えます。
この際、自分でも発音をしてみるのがオススメです。
本番です。
文章がスラスラ言えるようになるまで、音読を繰り返しましょう。
もし上手く発音できない部分があれば、【Step3】に戻って音を確認してくださいね。
ステップ0に戻って次の範囲を決めます。
音読の回数
【ステップ4】の音読について、次のステップに進む目安としては、
- よどみなくスラスラと音読できる
- 音読している時に英文の意味が頭に浮かぶ
様になればOKです。
ただし、上記はあくまで主観的な話なので、具体的な回数の目安を知りたい方も多いと思います。
「実力や参考書の難易度による」という前置きをさせて頂いた上で、1回の音読の回数は3~7回くらいが目安です。
- 回数が少ないと、スラスラ読めなかったり、読むスピードに理解が追いつかずに消化不良になります
- 回数が多すぎると、単なる作業になってしまい、音読中「何も考えてなかった!」という事になりかねません。
繰り返し回数
上記「ステップ0」~「ステップ5」を繰り返し、1冊の参考書が一通り完了したら、始めに戻って同じ手順を繰り返します。
「えーっ!まだ繰り返すの?!」
という声が聞こえてきそうですが、
繰り返せば繰り返すほど、前項で見た「音読の効果」を実感できるはずです。
2周目以降は各範囲における「ステップ1」~「ステップ3」の負荷は大幅に削減できるので、メインの音読に時間を割くことができます。
実力や参考書の難易度によりますが、同じ参考書を少なくても3回、出来れば5回以上繰り返しましょう。
結構やり込みました…
英語音読のオススメの教材
音読教材の条件
「音読」のやり方を見てきましたが、具体的にどのような教材を使って学習を進めていけば良いのでしょうか。
音頭の教材を選ぶ際は、以下の点に留意してくださいね。
【音読する教材の条件】
- 音声データのある教材
- 文法や構文が理解できる教材
- 内容に興味の持てる教材
- 自分より少しだけレベルの高い教材
最後の条件についてですが、「初見では意味が取りづらいけど、単語や文法を調べたら自分で意味が取れる」くらいが理想です。
迷ったら優しめの教材を選びましょう。
参考までに有名な教材をいくつか紹介しますね。
【1】速読速聴シリーズ
Basic2400→Daily1500→Core1900の順で難しくなります。
重要単語については、単語欄の記載があり、辞書を引く手間が省けます。
ネイティブチェックも入っており、繰り返し音読するに値する良質な英文ばかりです。
特にこだわりが無ければ本シリーズがオススメです。
ただし、Basicは内容が退屈です…
【2】ぜったい音読シリーズ
実績のある正統派の教材で、この教材で英語能力を大幅にUPさせた、という報告も数多くあります。
シリーズも多く出ているので、気に入れば徐々にステップアップしていくことが可能です。
熱狂的なファンもいらっしゃいますね。
【3】音読パッケージシリーズ
こちらも音読を目的として作られた教材です。
本書の特徴は、音読にリピーティングやシャドーイングを組み合わせて、音読に変化を与えようと試みている点です。
具体的な学習法に興味のある方は、是非書店で手に取ってみてくださいね。
内容が面白いものが多く、楽しみながら学習できましたよ。
英語音読の注意点
最後になりましたが、音読を行う際の注意点を挙げておきますね。
事前に発音の学習を行う
正しい発音を理解していないと、逆に変なクセがついてしまう可能性があります。
はじめから完璧を目指す必要は全くありませんが、常に理想となる発音は意識して音読を行うことが大事です。
その為に音読学習と並行でも構いせんので、必ず「発音」の学習は行うようにしてくださいね。
形式的に音読しない
音読は、発声すればOKという訳ではありません。
単語や文構造を理解した上で、英文の意味をイメージしながら行うことが大事です。
「a big apple」とあれば、きちんと頭の中で「大きなりんご」を思い描きながら、音読するようにしましょう。
英語音読のまとめ
以上いかがだったでしょうか。
「音読って思ってたよりもスゴイかも?!」と思って頂けたでしょうか。
「効果はありそうだけど、大変そう…」と思った方もいるかもしれません。
「もっと楽な方法があるはず!」と考えた方もいるかもしれません。
私も過去、より効率的な勉強法を求めてネットや書籍を探し回った時期がありました。
そして最終的に辿り着いたのが「音読」という、言ってしまえばありきたりの方法です。
ですが、改めて強調させてください。、
- 音読は、科学的にその効果が証明されつつある学習法です。
- 音読は、通訳者を含む多くの英語上級者が実践してきた実績のある学習法です。
- 音読は、リーディングからアウトプットまで英語能力を多角的に引き上げることができる学習法です
本記事を読んで少しでも音読による英語学習に興味を持って頂けたら、是非明日からの学習に「音読」を取り入れてみてくださいね。
「少しずつ」かもしれませんが「確実に」、あなたの英語力が上がっていくはずですよ。
シャードイングの「効果」や「やり方」については、こちらの記事「【究極の学習法】シャドーイングの超絶メリット【やらないと損?!】」で説明していますので合わせてご覧下さいね。
以上お付き合い頂き、ありがとうございました。
※「門田修平著 ”音読で外国語が話せるようになる科学”」参照