【書籍レビュー】ハイディの法則77【発音改善】

ネイティブと話をして、自分の発音が通じなくてショックを受けた」「ジャパニーズイングリッシュからなかなか抜け出せない」「もっとカッコよく発音したい

こんな悩みに答えるのが、表記の書籍「ハイディの法則77」です。どんな本かと言いますと、「発音記号とか面倒くさい話は抜きにして、ネイティブの発音を身に付けよう」という主旨で、ターゲットは英語初心者です。発音記号を使わないので、カタカナ表記です。例えば、Got upを「ガラップ」という表記になっています。

もちろん、カタカナ表現には限界があります。賛否両論あるレビューの中でも、ここを指摘する方が多いです。発音は発音記号で学ぶべきだ、と。本サイトでも、発音記号の学習を強く奨励していますし、基本的に私はカタカナ表記は反対です。それでもなお、本書籍をオススメするのは、それらを考慮しても、なお、余りあるメリットがあるからです。

本記事では、「ハイディの法則77」の特徴とその学習効果(個人談)について説明していきます。正しく活用すれば、あなたの発音は大きく改善します。自身の発音に不安のある方は、是非最後までご覧下さいね。

本書の特徴

ネイティブの発音に近いカタカナ表記

以前、【間違った英語学習法】テキストを見ないでリスニング【挫折の原因】で英語が聴き取れない4つの理由について説明しました。

(1)音の繋がり
(2)音の変化
(3)音の消失
(4)音の強弱

上記は、そのまま「ネイティブ」っぽく発音できない理由と言い換えることができます。本書では、上記が複合的に混ざりあって、日本人が発音しづらいフレーズ(誤った発音をしがちなフレーズ)に注目して、説明をしています。

説明だけでは分かりづらいと思いますので、少し例を挙げますね。

ハイディの法則7「イゼロ」
A ; I’ll have a hot tea please (ホットティーください)
B: Is that all? (以上でよろしいですか?)
(イゼロ)

「Is that all」が「イゼロ」の様に聴こえるし、そうイメージして話せばよりネイティブに近い発音になるよ、という風に説きます。本書では解説ありませんが、音の変化として下記が起こっています。

音の消失:「Is」の「s」が消失しています。「s」は発音しようとするけれども、その後の「th」に向けて既に口が動きだすため、実際の音になりません。
音の変化:「that」の「t」の音が変化して、日本語の「ラリルレロ」の「ロ」に近い音になっています。

もう一つ例を上げますね。

ハイディの法則9「ハバラ」
A ; What do you wanna eat? (何食べたい?)
B: How about a pizza? (ピザなんてどう?)
(ハバラ)

同様に、(細かい理屈は抜きに)「How about a」は「ハバラ」とイメージして発音すれば良いよ、という風に説明をしています。

さて、どのような感想を持たれたでしょうか。「分かりやすそうだな」という方もいらっしゃれば、「なんか適当。それで本当に大丈夫?」という印象を持たれた方もいるかもしれません。

上記がテキストだけの説明であれば、私もこの書籍を勧めません。「イゼロ」や「ハバラ」を日本語的に発音しても、やはり通じない可能性が高いです。

それでも、私はこのコンセプトはなお効果的だと考えています。日本人、特に英語初心者は、例えば「Is that all」では、「イズ ザット オール」をベースに、発音を構築しがちです。正しい音を聴いても、この日本語のベースに引っ張られて正しい発音をなかなか取得できません。

スタートを「イゼロ」に置けば、CDからの正しい発音と合わせることで、遥かに容易に正しい発音を取得できるのです

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発音の近さ(イメージ)

「Is that all」—————–(遠い)—————–「イズ ザット オール」
「Is that all」—(近い)—「イゼロ」
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そして、非常に大事なポイントとして、本書はCDを聴くことが大前提となっています。再び、本書から引用すると、

添付のCDをしっかりと聞いて、正しい音を素直に耳から聞き入れ、本に記載されているように、素直にそのままの音を口から出すエクササイズをしてみてください。-中略-
秘訣は『正しい音を60回以上反復』です!!!

要するに、発音する時に「カタカナ」表記を”イメージ”しながらも、CDの正しい音をベースに、繰り返し発音練習をすることが大事、ということですね。ここに関しては本当にその通りだと思います。正しい音を聴くことと、繰り返しの発音練習を重ねる事で発音の取得ができるのです。是非何度もCDを聴いて、発音練習をしてみて下さいね。

気軽で親しみやすい説明 (CD)

著者のハイディ矢野氏が、CDの中で結構ラフな話し口調で、発音の「法則」を説明してくれます。それが親しみ易く、学習のハードルを下げてくれます。これも1つ例を挙げると、77の法則の一つに、「あらエッサッサ~」というものがあります。

ハイディの法則67「あらエッサッサ~」
A ; We ought to go home? (私たちもう帰らなきゃ)
B: Already? It’s still early! (もう?まだ早いのに!)

一見、ふざけてますよね。ought toが「アラ」に聴こえるという話で、そうあればタイトルも「アラ」で良いと思うのですが、著者はそこに遊び心を入れます。CDの中でも、「あらエッサッサ~って感じで”We ought to go home”って言うんですよねぇ」と言った感じで、砕けた説明をしています。

これはほんの一例で、CDの説明は、著者のアドリブにも聴こえる自由な語り口調に終始しています。良く言えば遊び心が入っていますし、悪く言えば無駄があるとも言えます。

それがゆえに、好みはあると思いますが、私は繰り返し聴いてもストレスにならず、むしろエンターテイメント性もあり、好感を持ちました。やる気がないときも、「これだったら」と言った感じで出来て、学習のハードルは低かったです。

対話でフレーズも記憶

見開きで、左のページに例文(上記例のイメージ)と発音の説明、右のページにその発音を含んだ対話が記載されています。この対話が非常に効果的で、耳に残ります。

ハイディの法則10 シュルヴ

It’s so cold (うわっ!寒い!)
I should’ve brought a sweater(セーターを持ってくればよかった!)
Year, You should’ve known!(そうよ、当然でしょ?)
You should’ve told me!(言ってくれればいいのに!)
You should’ve asked!(聞いてくれればいいのに!)
I should’ve stayed home(家にいればよかった。)

「should’ve」=「should have」=「するべきだった」の意味ですが、私はこの対話で実際に使えるようになりました。発音の学習本ですが、対話を繰り返し聴けば、そこで使われる表現を発音と合わせて覚えることができます

あまりかしこまらずに隙間時間にCDを聴くだけでも勉強になります。少なくとも1周はテキストと学習を進めたいですが、その後はCDを聴いて、分からなければテキストを確認する、という使い方もできます。

学習の効果

多くの日本人にとって、良くも悪くも「それっぽい発音をしている人」=「英語ができる人」だったりします。

この本で英語学習を進めたある時、ワークショップで自分の担当部分を客先に英語で説明する機会があったのですが、関連部門のある人に「〇〇(私の名前)、すごいねぇ。TOEIC800くらい?!」と言われたことがあります。当時はたぶんTOEIC600前後だったと思うので、発音が良いというだけで、英語も達者だと思われるのです。

当時の私はこの本以外で、発音の学習はしていませんでした。「th」や「r」等、英語特有の発音は意識しているものの、発音記号は良く分からない状態です。それでも本書を通して発音のポイントを曲がりなりにも学んだおかげで、それなりの発音ができていたのだと思います。この本と並行して、基礎学習も進めていたので、「それっぽく話ができた」のが、すべてがこの本のおかげ、というつもりはありませんが、少なくとも発音に関しては、この本の寄与度が大きかったのは、間違いありません

ちなみに、「それっぽい」というと誤解を与えそうですが、この場合においては、「こてこてのジャパニーズイングリッシュを脱出して、不完全ながら英語らしい発音とイントネーションで発音できる」くらいで捉えて頂ければ幸いです。

本書を学習する前に

発音記号を勉強してから行う

発音記号を勉強してから、本書に取り組むことができれば「理想」です。これは「できれば」です。

繰り返しになりますが、本書の売りは「発音記号とか難しいことは抜きにして、発音を学習しよう」という点です(本書の中で、直接的にそのように記載がある訳ではありませんが…)。発音記号なしで発音の学習をしようとした場合、本書が最善のように思えます。実際、私も発音記号を勉強する前に、本書に取り組み、上述のように高い効果を上げることができました。そういった意味で本当に素晴らしい書籍だと思います。

一方、発音記号を知った上で、本書に取り組めば、もっと多くのことが得られただろうなぁ、と今は思います。実際、英語学習が進み、だいぶ経ってから本書を復習したのですが、新たな気づきも多かったです。

なので、「本格的に発音を勉強したい」という願望のある方は是非、本書学習の前に発音記号の学習にチャレンジしてみてくださいね(【英語】発音の効率的な学習法【退屈な学習方法にバイバイ】も是非参照くださいね)。

最後に

いかがだったでしょうか。

本書籍レビューを書くにあたって、アマゾンのレビューを改めて見たら、平均評価は3.5でした(2021/3/1現在)。高評価も多いですが、やはり低評価が足を引っ張ってます。この本で、音の変化をすべて学べる訳ではないですし、カタカナ表記には限界があります。著者の独特な雰囲気も、好き嫌いはあると思います。あまりに高い期待をすると、失望する原因になるかもしれません。

それでもなお、本書の主旨を正しく理解し繰り返し学習を続ければ、私が経験したように、自身の発音の変化にも気付けるレベルで発音の改善が期待できると思います

本書籍レビューで内容が気になった方は、是非、書店で手に取って見てみて下さいね。

以上お付き合い頂きありがとうございました。

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