英語学習を進められている方の多くは、「英文法は大事!」という事を聞いたことがあるのではないでしょうか。英会話をするにも、洋書を読むにしても、映画やアニメを見るにしても、英文法の知識は伴います。一方で、我々日本人の多くは、中学・高校で、英文法の授業を受けており、一通りの内容は学習してきているはずです。学習法の提言をする人の中には、「英語を使っていく中で、文法は自然と身に付くので、改めて文法の勉強を行う必要はない」と主張される方もいます。「文法を勉強するから、日本人は自然な英語が喋れない」という言う方すらいらっしゃいます。社会人から英語学習を始める場合、文法の勉強は本当に必要なのでしょうか。
本記事では、英語学習における「文法の必要性」について、理由と合わせてわかり易く説明しています。文法を改めて勉強しようか迷っている方は必読です。
それでは早速、見ていきましょう。
Contents
英文法の要否【結論:必要】
中高の文法は必須
理由は後述しますが、結論から言うと、中高の英文法は必須です。逆に中高で習った英文法がしっかり頭の中で整理できていたら、内容的には十分なレベルなのですが、多くの方は、これらを実用レベルで消化し切れていません。そもそも高校卒業以来、日常的に英語を使う環境にいない限り、ほとんどの内容を忘れている方が大多数だと思います。私も、高校時代に使い込んだ参考書を、改めて書店で買って復習したことがあるのですが、ほとんど内容を覚えていなくて、びっくりした経験があります。文法は、うっすら記憶の彼方に存在すれば良い、という類のものではなく、自身の中で確固たる基盤として、自由に使える状態にしておく必要があります。
英文法は英知の結晶
英文法は、先代の方々の英知の結集です。人の話す/書く言葉は、複雑であり、曖昧性もあり、また多様でもあります。このような言語の法則や性質を体系化したものが、文法です。この体系化された知識を利用しない手はありません。
英文法を学習せずに、英語学習することは
・地図を持たずに、広大な森の中でゴールを目指したり
・マニュアル無しで、複雑な装置を動かしたり
・公式を知らずに、数学の難問に挑んだり
するようなものです。
時間制限がなければ、地図を持たずにゴールを目指しても良いのですが、残念ながら我々の寿命は有限で、何事においても、できるだけ効率良く実現していく必要があります。英語学習においては、英文法がその大きな手助けをしてくれるのです。
なぜ不要と主張する人がいるのか?
冒頭で少し触れましたが、「英文法の学習は不要」と主張される方も、世の中には一定数いらっしゃいます。これら主張をする方々は、大きく下記の2種類に分別されると思います。
・自身は、本当に文法を(ほとんど)勉強せずに英語を取得した
・自身は、本当は文法を勉強したが、注目を浴びるために嘘を言っている
後者は問題外ですが、前者のように、先天的に言語処理能力が著しく高く、多読・多聴の中で、文法を自身の中で体系化できてしまう方が、世の中にごくごく少数ですが実在します。このような方は、自身が文法を勉強せずに英語を取得したため、その経験談に基づいて、英文法不要論を展開するため、悪意はないのですが、誤解を招く可能性があり、注意が必要です。
文法の必要性【経験的な視点】
私の周りの所謂、「英語ができる」人たちの中に、英文法の重要性を疑問視する人は、(帰国子女を除き)一人もいません。英語上級者はみな口をそろえて、「文法をきちんと勉強しておいてよかった」とコメントしますし、私自身の経験からも、本当にそう思います。一方で、
・100万円以上の費用を英会話スクールに費やしたが、まるで上達せずに英語を諦めた方
・本人はペラペラと話しているつもりだけど、文法が無茶苦茶で、聞き手が文意を掴むのが大変な方
・いつまでもTOEICの点数UPに固執し、英会話が出来ない方
を今まで見てきましたが、共通するのは、英文法を軽視していたことです。彼らは決して、中高で英語の学習をさぼったわけではなく、むしろ、みな大学に進学し、大学においても英語の学習を続けた人たちです。英文法が身に付かない背景に、英文法の必要性を認識できず、能動的に学習を進めてしまっている、ということも挙げられると思います。
文法の必要性【具体的な例】
少し具体的に見ていきたいと思います。
Ex1)冠詞
なかなか日本人には馴染みがなく、軽視されがちな冠詞ですが、使い方を間違えると意味が大きく異なる事があります。
(×)I had a lamb for dinner (夕食に、仔羊を一頭、食べた).
(〇)I had lamb for dinner(夕食に、ラムを食べた).
lambを「ラム」として使う場合は、不可算名詞として扱う必要がありますが、これを「a lamb」と可算名詞としてしまうと、仔羊を一頭丸ごと食べた、と意味になってしまうので、聞いたネイティブはびっくりすることになります。細かいですが、文法事項として、整理して理解しておかないと、この違いを認識するのは難しいと思います。
Ex2)関係代名詞
文法を習い始めた方が、おそらく一番最初につまずくであろう関係代名詞についてです。
How was the movie you were talking about yesterday?
(昨日話してた映画、どうだった?)
非常にシンプルな英文ですが、もし関係代名詞を使わずに表現するとしたら、
You were talking about a movie yesterday.
(昨日、映画について話してたよね)
How was it (=the movie)?
(それ、どうだった?)
と、2文に区切る必要があります。伝えるだけであれば、少し稚拙な感じはしますが、最悪、2文に分ければ伝わります。しかし、問題は、相手がこのような文章を言ってきた時に理解が出来ないことです。文法を理解していないと、このようなシンプルな一文ですら、表現できなくなってしまうのです。
Ex3)比較級
最後に、もう一つ例を挙げてみます。
A men thinks of nothing less than of death.
皆さん、上記文章の意味が分かるでしょうか。人は死について、考えるのでしょうか。考えないのでしょうか。自然な訳で表すと、下記になります。
「死ほど人間が考えないものはない。」
人は死について、良く考えるのですね。比較級の複雑な形ですが、これこそ文法知識なしで正しく理解するのは至難の業だと思います。
最後に
文法の学習といって、何も受験勉強のように、重箱の隅をほじくる様な、細かい文法事項を勉強する必要は全くありません。繰り返しになりますが、実使用上に耐えれるレベルとして、中高の英文法を抑えればそれで十分です。基礎を抑えて、必要に応じて応用を勉強していく、という方が精神衛生上も好ましいと思います。
英語学習者の9割が、文法学習で挫折します。これを逆手に取るように、「文法なしで英語ペラペラ」「1日5分でネイティブ」といった、過大広告とも取れるセンセーショナルな見出しが、よく本のタイトルや説明用の帯を、飾っているのを見ます。悪意がないものも中にあるのかもしれませんが、現実を理解している私からすると、強い嫌悪感を抱いてしまいます。日本人の英語が話せない原因の一旦は、これら過大広告によって、一般学習者に誤った英語学習のイメージを据え付けられているから、とすら思ってしまいます。
この記事を読んだ皆さんが、文法の必要性を理解し、現実を見据え、残りの1割の学習者として、英語学習を続けることができたら、本記事の著者として、これに勝る喜びはありません。
以上お付き合い頂きありがとうございました。